雪を利用した再エネ~邪魔者をエネルギーに~

雪を利用した再エネ~邪魔者をエネルギーに~

再生可能エネルギーは発電だけではありません。

自然エネルギーで人類活動に必要なエネルギーを賄っていれば、全て再エネです。

エネルギーという概念は熱ですが、その熱を冷やすために電気が使われ、その電気を発電するために熱エネルギーが必要となりますので、熱を冷やすための冷気はエネルギーとなりますね。

今回は冬に降った雪を貯蔵して、その冷気というエネルギーを利用する再エネを紹介します。

雪氷熱利用

冬季に降った雪を地下や雪室に大量に貯めて、その冷気を利用する方法です。

これは豪雪地帯でならではの再エネです。

主な利用方法としては、
・夏場の冷暖房
・食料の保存
です。

これを「雪氷熱利用(せっぴょうれいねつ)」と呼んでいます。

仕組みは言うまでもなく単純ですね。

雪国にとっては、いわば無尽蔵のエネルギー源です。

私は雪国出身ですので、冬に大量の雪が降る度に、夏に使えれば電気代がかからないのに、と思っていました。笑

でも調べて見ると実際に取り組んでいる地域がいくつかあります。

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取り組み例①~新潟県上越市立安塚中学校~

ここでは教室の冷房システムに雪を利用しており、夏の冷房を全て賄える量の雪を貯められるとのこと。

システム概要は以下の通りです。
・貯蔵した雪に水をかけて得られた冷水をポンプにより熱交換器に送る
・冷水の熱交換により冷風をつくる
・熱交換器から戻った温水を再び貯蔵した雪にかけて循環
・ポンプの電力は30kWの太陽光で賄う
・溶けた水の一部は構内の取柄洗浄水や緊急用の水として使う

<システム概要>
・貯雪庫:1320m3(約660t)
・冷房面積:約1,800m2
・ポンプ必要電力:30kW太陽光システムより供給

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ただコストは
・設置費:4,750万円
・ランニングコスト:13万/年
・省エネ額:70万/年

単純計算で投資回収までに80年かかる計算です。公的費用でないと無理ですね。

平成15年度の校舎大改修時に設置されたとのことですが、新たに設置するので設置コストはかかって当たり前です。後付けなので2か所で熱交換しているシステムも無駄です。

せめて新築時に一緒にあわせ効率的な配置計画で設置すればもう少し費用は抑えられそうですね。

記事出典:学校施設における再生可能エネルギー活用事例集~ 熱利用分野 ~|国立教育政策研究所

取り組み例②~長野県野沢温泉村~

野沢温泉は日本有数の豪雪地帯です。野沢菜が美味しいところです。

そこのレジャー施設「野沢温泉スパリーナ」では、巨大な雪室(貯蔵量約300トン)を利用して、施設内のレストランやリラックスルームの冷房や酒や野菜など地元農産品を貯蔵する冷蔵庫に利用しているとのことです。

記事出典:野沢温泉に冷房用雪室、建設へ 雪を新エネルギーに 信濃毎日新聞

上記の取り組み例①と②は、「公益法人雪だるま財団」がコンサルティングを行っているそうです。

取り組み例③~北海道美唄市~

米穀雪零温貯蔵施設(雪蔵工房)では、貯蔵した雪を利用して玄米の保管や野菜の出荷調整を行っている施設です。

約3,600トンの雪を雪室で蓄えて、この冷風により貯蔵庫内を温度5℃、湿度70%に保ち玄米の品質劣化を抑制するそうです。

記事出典:米穀雪零温貯蔵施設(雪蔵工房)における雪詰め作業 北海道農政事務所

全国の雪氷熱利用状況

調べて見ると全国で140程の施設で利用されているそうです。

新千歳空港でも使われているようです。
新千歳空港における環境への取り組み

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出典:ビジネスで活用しよう! 雪氷冷熱の環境価値 – 北海道経済産業局

ここからは個人的な意見ですが、雪氷熱利用の問題点はやはりコストだと思います。

仕組みは単純なのでコスト低減の余地はありそうですが、このメリットが生かせるのが豪雪地帯のみという制限上、どうしても市場原理が働きにくいのが普及しない原因なのかなと思います。

しかも豪雪地帯なので夏場は言うほど暑くないため、冷房の削減効果も薄れます。

雪室から冷風や冷水を運ぶ距離が長いと、当然温度が上がってしまうので極力利用場所の近くに設置する必要があるのも限定されます。

そうするとやはり補助金事業の一環として限定的な利用にとどまってしまうと思いました。

でも補助金であっても、環境を守るためにこのような税金の使い方をするのは良いですね。

是非、普及してほしいと願います。

その他リンク

雪氷熱利用|再エネとは|なっとく!再生可能エネルギー

雪冷熱エネルギーの活用促進 – 国土交通省