NHKスペシャル食料問題から考える再エネ
先日、放映されたNHKスペシャル
「未来への分岐点 (2)「飽食の悪夢〜水・食料クライシス〜」
2030 未来への分岐点 (2)「飽食の悪夢〜水・食料クライシス〜」 – NHKスペシャル – NHK 先進国の食への飽くなき欲望が、世界中に「飢餓のパンデミック」を拡大させている。日本で一年間に出される食品廃棄物を世界に分配 www.nhk.jp
この人類への食糧問題への提起を通して、再エネの重要性について考えてみました。
飽食が招く危機
飽食という言葉は、この番組で初めて耳にしました。
飽食:「十分に食べて満ち足りること。食物に不自由のないこと。」
今の日本や先進国が該当しますね。
では何故、飽食なのか?
それは食料を大量に生産できる国から輸入しているからです。消費国と生産国の分離です。世界の食料の輸出量のおよそ80%を20か国ほどで独占している状態とのことです。
この番組では「肉」に焦点を当てて問題提起をしてます。
この肉を生産する過程は、以下と述べられています。
・牛や豚の家畜を大量に育てる。
・家畜を育てるためには大量の穀物(トウモロコシ等)を必要とする。
・その穀物は世界の生産量の三分の一を占める。
・そして穀物を生産するために大量の水を消費している。
・水は主に地下水をくみ上げ、地下水の水位は年々減少している。
肉1kgを生産するために必要な穀物を水に換算すると
その量はおよそ1万5, 500リットル。
つまり 1kgの牛肉を輸入すると風呂およそ80杯分の水を使う計算になります。
先進国での肉の大量消費が生産国での水不足を引き起こしており、更に先進国では必要以上の肉の飽食により大量の食品廃棄が行われていると、番組では述べられています。
消費国と生産国の分離。そして生産国での水不足。
これが現在の世界の食料システムとのことです。
ここからこの食料システムのどこか一つで狂いが生じると先進国はもちろん世界的な食糧危機に陥る、と警告しています。
飽食から学ぶエネルギー問題
番組の数値等の信頼性は置いておいて、消費国と生産国の分離、生産国での資源不足、というのはエネルギーでも同様だと思います。
2018年の日本の一次エネルギー自給自足率は11.8%
一次エネルギーの化石燃料依存度は85.5%
その化石燃料の海外依存度は、ほぼ100%。
電気に関して言えば、2018年度の化石燃料依存度は77%。
2030年度の目標においても依存度は56%。極めて消極的な数字です。
出典:日本のエネルギー2020 経済産業省資源エネルギー庁
現在においても未来の目標においても、化石燃料生産国からの輸出がストップすれば、たちまち電力危機に陥ります。
しかもそのレベルは危機と言うよりは、今の生活の崩壊です。
出典:日本のエネルギー2020 経済産業省資源エネルギー庁
飽食から学ぶ再エネの重要性
飽食ならぬ飽電とエネルギー生産国に頼る日本および世界のエネルギー形態は、食料問題と全く同じと考えられます。
解決の手段としては、
・エネルギー消費量の低減
・エネルギー自給率の向上
だと思います。
エネルギーとしての電力の観点から私の考えを記載します。
電気消費量の低減
単純に使う電気を減らすというのは難しいでしょう。人間の特性上、一度向上した生活レベルを自ら落とすということは考えにくいからです。
生活レベルを維持した上で電気消費量を減らすには、一般的には省エネ化があると思います。ただそれは既に10年以上前から行われていて劇的に減らすのは困難です。
そこで現在使用していないエネルギーを活用して、結果的に現在の全体の電力消費量を減らすという取り組みが重量だと思います。
これは各家庭レベルでの、
「太陽光+蓄電池(電気自動車含む)」
の導入で達成できると考えます。
ちょっと古いですが2015年度の家庭用電力量(電灯)の販売電力量に占める割合は約33%です。約3割が家庭消費です。
出典:2015年度分 電力需要実績 (確報)(電気事業連合会)
2015年度の一世帯あたりの電力消費量は約250kWh/月です。
出典:日本の電力消費量(電気事業連合会)
これを屋根置きの太陽光発電で賄うには、太陽光の設備利用率を13%※とすると
※出典:電源種別(太陽光・風力) のコスト動向等について – 経済産業省
250kWh/0.13/30日/24h=2.7kW
の太陽光システムとそれを蓄える蓄電池が必要となります。
家庭レベルの設備規模として不可能な容量ではないと思います。
家庭で使う電力程度であれば無効電力の問題もないため、家庭用パワコンのみでコントロールできると思います。
政府主導で補助金を出して各家庭への太陽光+蓄電池の義務化をすれば家庭レベルでのオフグリットが達成され約3割の電力消費を減らせるのです。
これは消費を減らすのと同時に電力供給量の自給率を30%向上させることができます。
電力自給率の向上
化石燃料の自給率をあげるのは資源の乏しい日本では不可能なので、化石燃料による発電を代替できるエネルギーを使用するしかありません。
代替エネルギーは、当然ですが、再生可能エネルギーです。
太陽光、風力、水力、地熱、これらは純国産ですので、導入すればするほど自給率は向上します。
一方、バイオマス発電はこの自給率の観点から言うと再生可能エネルギーとしては、少々問題があります。
バイオマス発電は、カーボンニュートラルであり、既存の化石燃料による発電の代替となるため、再生可能エネルギーに該当するのは間違いではないと思います。(厳密には系統調整という面では代替とはいきませんが)
問題は、そのバイオマス燃料にあります。現在の大規模バイオマス発電所の主な燃料は海外から輸入するペレットやPKS(ヤシ殻)です。
輸入している時点で海外に頼っていると同じことになります。これは、日本のバイオマス燃料の市場自体が小さく、また価格も高いため、国産燃料を使いたくても使えない現状があります。
これも国をあげて、国産バイオマス燃料を使用できる仕組みづくりが必要です。
電力システムは、太陽光や風力のような変動電源だけで需給調整を維持することはできません。変動電源と系統調整能力のある火力発電は対の関係にあります。
その理由から火力発電所を劇的に減らすことは難しいので、化石燃料をバイオマス燃料に転換するのがまず必要になると思っています。
将来的には、火力発電の系統調整能力を蓄電池にて代替することができれば、再エネ100%に近づけることも不可能ではないと私は考えています。
地球のエネルギーバランスを崩さない
重要なことは、人間生活に必要な必要最小限のエネルギーを地産地消することだと思います。
その土地で得られるエネルギーを可能な限り最大限使うことが、人類が長く反映するために必要なことです。
特定の場所の大量のエネルギーを違う場所で集中的に大量に使用し過ぎているのが現代社会です。
特定の場所が壊れると全体のバランスが崩れて維持ができなくなります。体と同じです。
地球全体のエネルギーバランスを崩さないよう、人間生活も生活範囲にてバランスを保てる範囲で共存していく、これが最も重要なことではないでしょうか。
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